日本が加速する「蓄電池関連産業」の標準化

NITE(製品評価技術基盤機構)とJARI(日本自動車研究所)が協定を締結

2050年に100兆円規模へ:加速する蓄電池市場と次世代技術の進歩

2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、蓄電池(二次電池)の産業は急速に発展しており、経済産業省の試算によると、2050年まで蓄電池市場は100兆円規模まで成長するとされています。

蓄電池は、主に電気自動車(BEV)やプラグインハイブリッド車(PHV)、ハイブリッド車(HEV)などの車載用に大きな需要が見込まれており、ビルや家庭向けの太陽光発電用定置型蓄電池としてさらに、最近では全固体リチウムイオン二次電池や革新型蓄電池など、次世代の高性能蓄電池が注目されており、その実用化が急がれています。

また、電気自動車(BEV)から取り出した中古蓄電池の再利用やリサイクルも、資源の有効活用や循環型経済の視点から推進されています。 今後は、廃車になった電池のリサイクル技術がさらに発展し、持続可能な社会を支える重要な要素となります。

図1:拡大する政界の蓄電池市場

出所経済産業省「参考資料(蓄電池)」

  • 蓄電池市場は車載用、定置用とともに拡大する見通し。当面は、EV市場の拡大に伴い、車載用蓄電池市場が急拡大。足下で、定置用は車載用の1/4程度の市場規模だが、2050年に向けて定置用蓄電池の市場も成長する見込み。
  • こうした市場の傾向を踏まえて、国内における設備投資も車載用蓄電池が先行すると考えられる。

図2:リチウムイオン二次電池(液体LIB)と全固体リチウムイオン二次電池(全固体LIB)との違い

LIB:Lithium Ion Battery
出所蓄電池産業戦略検討官民協議会「蓄電池産業戦略」、2022年8月31日

NITEとJARIが協定締結、蓄電池産業のさらなる発展を目指す

このような背景の中で、蓄電池産業の強化を目指した新たな対決が、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)と一般財団法人日本自動車研究所(JARI)によって発表されました。 、2024年7月26日に含まれる相互協力協定を締結し、蓄電池の安全利用に関する基準を進めていく予定です(図3参照)。

NITEは、工業製品の安全性や性能を評価し、その認定や情報発信を行っております経済産業省の独立行政法人であり、大型蓄電池システムに関する安全試験や検証も担当しています(写真左)。 、JARIは1969年に設立され、自動車や道路交通に関連する研究と試験を目的とした機関です。最近では、電気自動車(BEV)や自動運転技術の研究を進め、2050年の脱炭素化を見据えた自動車技術の開発や標準化の支援を行っています(写真右)。

図3:NITE(製品評価技術基盤機構)とJARI(日本自動車研究所)の協力関係イメージ

出所独立行政法人製品評価技術基盤機構、「NITEとJARIが蓄電池分野の協力協定を締結」

NITE(左:大阪事業所 先端技術評価実験棟、大阪市住之江区)とJARI(右:耐爆火災試験設備、茨城県東茨城郡城里町)の外観

出所:ともに、独立行政法人製品評価技術基盤機構「NITEとJARIが蓄電池分野の協力協定を締結」

技術革新に対応した安全性や各種基準の確立へ

蓄電池は、自動車を電動化し走行時のCO2排出量をゼロにする。現在主流となっているリチウムイオン電池(LIB:Lithium Ion Battery)は性能や容量、重量などで改良の余地があり、かつ使用材料には国家間などでの緊張の高まりや不安定な政治体制、 紛争・テロなどによる「地政学的リスク」をもつものもある。このため、それらの課題のクリアを目指して、前述した全固体電池や革新型蓄電池といった次世代二次電池の開発が活発化している(図4)。  これらの新技術は従来とは異なる材料で構成されているため、その性質に応じて適切な評価方法を確立し、安全性などの性能を評価する必要が生じている。  また、BEVが普及すれば従来の自動車の廃車も増える。それらの廃車に搭載されていた車載用蓄電池の再利用策として、ビルなどの施設や一般家庭向けの定置用蓄電池システムへの転用も進められている。しかし、中古蓄電池の内部状態は新品時とは性能が異なるため、再利用時の安全性に関する基準や評価方法の確立を望む声が高まっている。  NITEとJARIは今回の協定によって協力関係を深め、BEV用・定置用など幅広い種類の蓄電池に関して、その安全製評価や技術の標準化を加速させる。これによって蓄電池システムの安全運用や、中古の車載用蓄電池の二次利用を広げていく予定だ。

図4:車載用蓄電池の中長期的な次世代蓄電池技術への移行イメージ

  • 車載用蓄電池が満たすべきニーズは、高エネルギー三つ子から高出力・低コスト・資源制約の低減等まで多岐に渡り、現状、すべての条件を満たす蓄電池は存在しない。
  • それぞれの蓄電池のメリット・デメリットを把握した上で、搭載車両のニーズ・要求性能から適切な蓄電池を選択する「バッテリーミックス」の考え方が重要。

出所経済産業省「参考資料(蓄電池)」

 

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