2024年6月にイタリアで開かれた主要国首脳会議(G7)は、地球温暖化対策を大きく前進させる重要な節目となりました。
この記事では、各国が合意した具体的な脱炭素の取り組みとその意義を、わかりやすく解説していきます。世界規模で進むエネルギー変革の流れが、私たちの暮らしにどんな影響を与えるのかを一緒に見ていきましょう。
G7が示した脱炭素への加速方針
2024年のG7では、2023年に日本で開かれたG7広島サミットや、パリ協定の目標達成度を検証するCOP28(第28回国連気候変動枠組条約締約国会議)での合意が継続的に引き継がれました。
そして、各国が温室効果ガスの排出を事実上ゼロにする「ネット・ゼロ」へ向けた取り組みを、さらに強化する姿勢を再確認しました。
とくに、地球温暖化対策の進み具合を世界規模で評価する「グローバル・ストックテイク(GST)」で示された不足分を補うため、主要経済国が連携して排出削減のスピードと規模を高める必要性が強調されています。
2025年に予定されるCOP30の9~12か月前までには、温室効果ガスの総量削減目標(NDC)を改定し提出することが呼びかけられ、各国の具体策づくりが加速する見込みです。
こうした合意によって、技術面・政策面の双方で協力体制を強め、世界全体の脱炭素を一気に進める狙いがあります。
6つの主要項目による多角的なアプローチ
今回のG7閣僚会合では、脱炭素の具体策として以下の6つの領域が中心に議論されました。
- 再生可能エネルギー(再エネ)
- 省エネルギー(省エネ)
- 水素・アンモニアなどのクリーン燃料
- 炭素管理技術(CCUSやCDR)
- 原子力・フュージョンエネルギー(核融合)
- 石炭火力発電のフェーズアウト
まず再エネでは、世界的に導入容量を2030年までに大幅拡大する目標が掲げられ、蓄電システムなどのエネルギー貯蔵技術と合わせて普及を後押しする方針が示されています。
省エネは「第一の燃料」と位置づけられ、2030年までにエネルギー効率を2倍に高める取り組みが合意されました。
また、水素やアンモニアといったクリーン燃料の利用拡大や、CO2を回収・貯留するCCUS、大気中から直接CO2を除去するCDRの研究強化も、産業脱炭素の要とされています。
さらに、化石燃料への依存度を下げるクリーンエネルギー源として原子力が再評価され、将来的に大きな可能性を持つフュージョンエネルギー(核融合)にも初めて言及がなされました。
石炭火力発電に関しては、2030年代前半をめどに、排出削減対策のない設備をフェーズアウトする方針を維持しつつ、各国の状況に応じた転換計画が求められています。
エネルギー安全保障面では、重要鉱物や天然ガスのサプライチェーン強化なども含め、多方面から脱炭素を推進する必要性が確認されました。
産業構造と国際協力 – 排出削減の新たな課題
脱炭素はエネルギー分野だけでなく、製造業や交通、廃棄物処理など多岐にわたる産業構造の変革を要求します。
G7では特に、鉄鋼などエネルギー多消費型設備のCO2排出を大幅に削減するため、先端技術を一刻も早く実用化し、国際的な評価手法を整備することが議論されました。
また、排出規制が厳しい国からゆるい国へ産業が流出する、「カーボンリーケージ」を防ぐ仕組みづくりも重要視されており、各国の排出量の算定基準や税制などを国際的にすり合わせる必要があるとされています。
そして注目されたのが、CO2以外の温室効果ガスであるメタンへの対策です。化石燃料の生産・輸送などから排出されるメタンを、2035年までに世界全体で35%削減するほか、廃棄物分野においても排出量の大幅削減を目指す方針が盛り込まれました。
こうした大規模な排出削減を可能にするには、重要鉱物や天然ガスの安定供給といったエネルギー安全保障の課題にも取り組まなくてはなりません。
クリーンエネルギー製品の製造には希少な資源が不可欠となるため、サプライチェーンの強靱化と国際連携がいっそう求められています。
まとめ
今回のG7サミットでは、地球温暖化対策を実行するための多角的アプローチが改めて打ち出されました。
再エネや省エネ、水素などのクリーン燃料を大規模に導入すると同時に、CCUS・CDRや原子力をはじめとする先端技術を総動員し、1.5度目標に近づける戦略が示されています。また、カーボンリーケージやメタン削減、重要鉱物のサプライチェーン強化といった課題も大きなテーマです。
こうした方針を実践に移すには、政府や産業界だけでなく、私たち消費者の理解や行動も重要になります。
身近な省エネや循環型の暮らしを取り入れながら、世界規模の脱炭素へ向けた動きを支えていくことが求められているのです。