系統用蓄電池ビジネスの未来はあるのか?コストと政策から読み解く展望

系統用蓄電池ビジネスは、再生可能エネルギーの拡大にともなう出力抑制や需給の不安定化といった課題を背景に、今後の日本における電力システムの安定化を支える重要な役割を担っています。

特に2025年3月に発表された国の「定置用蓄電システム普及拡大検討会」のとりまとめは、導入拡大に向けた政策の方向性や事業化への課題を明確にしました。しかしながら、導入コストの高さや事業の収益性、アグリゲーターの必要性など、実現には複数のハードルがあります。

この本記事では、国内外の導入状況やコスト構造、収益モデル、そして政府の支援策を具体的に解説し、系統用蓄電池ビジネスの未来を多角的に読み解いていきます。

定置用蓄電システム普及拡大検討会の概要と背景

再生可能エネルギーの導入が進むなか、日本でも系統用蓄電池の活用が急務となっています。その背景には、電力の需給バランスを保ち、再エネ電力を有効に活用するという課題があります。

2025年3月、経済産業省資源エネルギー庁がとりまとめた「定置用蓄電システム普及拡大検討会」の報告は、まさにこの課題への対応策を明確に示すものでした。はじめに、その内容と背景を具体的に解説していきます。

2025年3月のとりまとめの主なポイント

2025年3月に発表された「定置用蓄電システム普及拡大検討会」の報告では、系統用蓄電池の普及に向けて、導入目標や課題、政策対応の方向性が整理されました。とりわけ重要なのは、「蓄電池を単なる補助的な設備ではなく、電力インフラの一部として位置づける必要がある」という認識です。

この報告では、2030年時点での国内蓄電池導入量を24GWと見込んでおり、現在の導入量からは大きな飛躍が求められています。また、蓄電池のコスト低減と性能向上を両立する技術開発の促進、事業性を高める市場制度の整備が不可欠だとされています。

さらに、事業者が安心して投資できるような長期的なルール整備、そして金融機関の理解促進に向けた支援策も挙げられており、単なる補助金頼みの普及策から脱却しようとする方向性が見て取れます。

普及拡大の必要性と政府の問題意識

系統用蓄電池の普及が求められる背景には、電力システム全体の柔軟性を高める必要性があります。特に近年は太陽光発電の出力抑制が頻発しており、「せっかく発電した電気が使われない」という事態が全国的に広がっています。

このような状況を改善するためには、電気を一時的にためておく装置、すなわち蓄電池が不可欠です。政府は、これを単なる技術課題ではなく、制度や事業モデルの課題としてもとらえています。

たとえば、卸電力市場や需給調整市場といった複数の市場において、蓄電池を活用した収益化の可能性を探る制度設計が進んでいます。政府の意識としては、「蓄電池が再エネ拡大の足かせにならないようにする」ことが、脱炭素社会の実現に向けた鍵であると認識しているのです。

系統用蓄電池の導入拡大が求められる背景

なぜ今、これほどまでに系統用蓄電池の導入拡大が叫ばれているのでしょうか。その最大の理由は、再生可能エネルギーの急拡大による「出力抑制」と「需給の不安定化」です。

特に晴天が続く春や秋には、太陽光発電が発電量のピークを迎える一方で、需要がさほど多くないため、発電した電力が使い切れず、送電網に流し込むことができないケースが発生しています。この状況を放置すると、太陽光発電事業者にとっては大きな損失となり、再エネ導入の障害にもなりかねません。

こうした問題を解決するには、系統用蓄電池を活用して一時的に電気を貯め、需要がある時間帯に放電する仕組みが有効です。まるで水の流れを一時的にダムでせき止めて、必要なときに放流するような役割を果たします。

また、地域ごとの系統混雑の緩和や、災害時の電力供給手段としても蓄電池は重要な役割を担います。導入拡大は、再エネの最大活用だけでなく、電力供給の安定にも直結しているのです。

国内の大型蓄電池導入状況と海外との比較

日本国内でも系統用蓄電池の導入が進みつつありますが、海外と比較すると、その規模やスピードには依然として差があります。政府や電力会社による大型プロジェクトの発表も増えてきましたが、主力電源としての運用には至っていないのが現状です。ここでは、国内の代表的な事例や導入実績を紹介しつつ、海外との違いや今後の課題について具体的に解説していきます。

関西電力の札幌蓄電所事業とは

2025年3月、関西電力はスパークス・グループ、JA三井リースと連携し、北海道札幌市で大規模な系統用蓄電池の新設を発表しました。この事業は2か所に分かれ、合計蓄電容量は35万1000kWh(=351MWh)に上ります。これは、国内で計画されている中でも最大級のプロジェクトであり、2028年4月の商用運転開始を目指しています。

比較として、関西電力がすでに和歌山県で運用している蓄電所の規模はその3分の1程度とされており、新たなプロジェクトの投資総額は200億円に達する可能性があります。こうした取り組みは、単に電力調整の手段としてだけでなく、大規模な電力インフラへの転換点とも位置づけられます。

国内の導入量は2GWを突破

資源エネルギー庁が公表した資料によれば、2023年時点で日本国内における再エネ併設・系統用蓄電池の導入量は2GWを突破しました。これは過去10年で急成長を遂げた結果であり、特にここ数年は導入件数・規模ともに加速しています。

この「2GW」という数字は、発電所換算でいえば中規模の火力発電所2〜3基分に相当する規模です。導入が進んでいる背景には、再エネ出力抑制への対応だけでなく、政府の補助金制度や市場整備の後押しもあります。

ただし、この数値は導入総量であって、実際の稼働状況や収益性は案件によって大きく異なります。まだ事業性が確立していない段階のものも多く、単なる数字の成長にとどまらない、質の向上も求められています。

米国・中国との導入規模の格差

一方で、海外の導入状況と比較すると、日本は依然として後れを取っています。特に米国や中国の蓄電池導入は桁違いであり、2023年時点で米国の導入容量は約11GW、中国は世界全体の約半分を占めています。

たとえば、米カリフォルニア州だけで見ても、60MWを超える大型蓄電池がいくつも稼働しており、その出力規模と実用性は日本の現状とは大きく異なります。電力のピークシフトだけでなく、需給調整や系統安定化のための基幹電源として機能しているのが特徴です。

このような規模の差は、制度設計の違い、発電事業の自由度、また長期的な政策の有無など、複数の要因が絡み合って生じています。日本においては、まだ「補助金で導入する先進技術」という位置づけから抜け出しきれていない状況です。

主力電源化する海外蓄電池の実態

海外では、系統用蓄電池がすでに「主力電源」として位置づけられつつあります。これは、単に再エネと組み合わせて出力を平準化するための装置ではなく、系統の安定や市場取引、容量確保といった多用途に対応していることによるものです。

たとえば、米国では蓄電池による「アービトラージ(安い時間に充電し、高い時間に売電)」が市場で広く活用されており、単体で収益化できるモデルが構築されています。また、中国では大規模なインフラ開発の一環として、都市ごとに蓄電池を設置する政策が進められています。

これらの国では、制度と技術、金融が三位一体で動いており、リスクを抑えながらも拡大を可能にしています。日本がこの水準に追いつくには、導入支援だけでなく、市場設計や運用ノウハウの蓄積も必要不可欠といえるでしょう。

高額な設置費用とその内訳

系統用蓄電池の導入を検討するうえで、最大のハードルとなるのが初期費用の高さです。蓄電池そのものの価格に加え、工事費や受変電設備、運用管理システムまで含めると、事業全体の投資規模は非常に大きくなります。この章では、具体的なコスト構造を分解しながら、なぜここまで費用が膨らむのか、また海外との価格差についても解説していきます。

蓄電池設備の単価と工事費用

定置型蓄電池システムの設置には、本体価格に加え、設置・接続工事などの費用が加算されます。2025年時点での目安として、システム全体で1kWhあたり約5万4000円が本体価格で、工事費として約1万4000円が必要とされています。合計で1kWhあたり6万8000円という計算になります。

たとえば、1MWh(=1000kWh)の蓄電池を導入する場合、単純計算で約6800万円のコストがかかることになります。これは電池部分だけの金額であり、実際にはさらに多くの付帯費用が発生します。

工事費用には、基礎工事、電気系統との接続、温度管理設備の設置などが含まれます。特に大型の蓄電池は重量も大きく、工事の手間も増えるため、設置コストの変動要因は少なくありません。

受変電設備など付帯コストの大きさ

蓄電池本体と同様に大きな負担となるのが、電力系統と接続するための受変電設備の整備です。これらの設備には、高圧受電設備、トランス、制御盤などが含まれ、数億円規模の費用がかかるケースも珍しくありません。

たとえば、蓄電容量が数MWh規模になると、それに見合った大容量の受変電設備が必要になります。さらに、需要地と発電地が離れている場合や、送電インフラの整備が不十分な地域では、別途電力会社との連携工事も必要になります。

このように、蓄電池の設置は単に「箱を置くだけ」の話ではなく、周辺インフラを含めた大掛かりな設備投資を伴うものです。こうした費用が初期導入の壁となっており、中小企業や自治体にとっては特に大きな負担となります。

海外製品導入時のコスト水準との差

報告書によれば、日本国内で補助金を使わずに海外製の蓄電システムを導入した場合、1kWhあたりのコストは2〜4万円程度に抑えられるケースもあるとされています。これは、国内価格と比べて大幅に安価です。

ただし、海外製を導入するには、技術仕様の違い、保守部品の調達、認証基準の相違などの課題もあります。加えて、為替の影響や輸送コストが加わることを考えると、単純に価格だけで比較するのは危険です。

とはいえ、こうした価格差は、今後の蓄電池市場にとって重要な意味を持ちます。国内メーカーの競争力強化や、コスト削減への取り組みが求められており、政府の技術支援や調達制度の見直しも必要となるでしょう。

投資額の目安:数億~10億円超も

系統用蓄電池の事業を立ち上げるためには、総額で数億円から10億円超の投資が必要とされます。規模によって大きく異なりますが、たとえば3MWh規模のシステムでは、蓄電池本体と工事費で2億円以上、受変電設備で3億円前後、その他運用管理費用などを加えると、合計で7〜8億円に達することもあります。

さらに、事業によっては複数年にわたる運用シミュレーションや市場参入コンサルティング、アグリゲーターとの契約など、見えにくいコストも加算されます。

このように、系統用蓄電池の導入には「簡単に始められるビジネス」ではないという現実があります。収益化の見込みや市場動向を十分に分析し、資金調達やリスクマネジメントを含めた計画が欠かせません。

収益化のための多様なビジネスモデル

系統用蓄電池は再エネの活用拡大において欠かせない存在ですが、事業として成立させるには単純ではありません。蓄電池単体ではコスト回収が困難なケースが多く、収益性を高めるには複数のビジネスモデルを組み合わせる必要があります。ここでは、代表的な収益手段と、地域による採算性の違いについて具体的に解説します。

単体での黒字化は困難な現実

系統用蓄電池は、設置や設備投資に多額の費用がかかるうえ、定期的なメンテナンスや運用のコストも発生します。その一方で、単独の用途で安定した収益を確保するのは難しく、現時点では黒字化できていない事業が多数を占めています。

たとえば、出力制御の回避や市場取引の収益だけでは、年間の収入が運用コストや償却費を上回るケースはまれです。そのため、複数の収益源を組み合わせ、収益を分散させながらリスクを減らす戦略が不可欠とされています。

この構造は、再エネ固定価格買取制度(FIT)のように一律で高単価が保証されていた従来のモデルとは異なり、複雑な市場環境を前提にしたビジネススキームを構築する必要があることを意味します。

4つの主な収益源

系統用蓄電池のビジネスでは、以下の4つの用途を組み合わせることで収益の最大化を目指します。それぞれの特性と収益ポテンシャルを理解しておくことが重要です。

1. 出力制御回避・需給緩和

再エネ発電量が需要を上回る際、発電を止める「出力制御」が行われますが、蓄電池を活用すれば電気を貯めて無駄なく利用できます。これにより、発電事業者は発電停止による損失を回避できます。

2. 卸売市場でのアービトラージ

電気の価格が安い時間帯に充電し、高い時間帯に売電する手法です。電力スポット市場を活用したこの取引は、価格変動をうまく捉えられれば収益が期待できますが、価格予測や取引スキルが必要です。

3. 需給調整市場への応札

電力需給のバランスを保つための市場で、急な需要や供給の変化に対応する調整力を提供します。蓄電池は高速な出力変化が可能で、こうした用途に適しています。報酬単価は高めに設定される傾向があります。

4. 容量市場への応札

将来の電力供給能力を確保するために、一定期間電力を供給可能な設備に対して報酬が支払われる仕組みです。設備が「存在すること」に価値があるため、定常運用に向いていない蓄電池にも収益チャンスがあります。

これら4つは単独では採算に限界がありますが、同時に活用することで収支改善が見込めます。ただし、運用に高い技術力と市場対応力が求められます。

九州など一部地域で見られる採算性

全国的には事業化が難しい系統用蓄電池ですが、九州など一部地域では比較的採算性が確保されています。特に、FITで高単価(40円/kWhなど)での買取が適用された太陽光発電設備と蓄電池を併設した事業では、電力の買取価格と市場価格の差を活かしたアービトラージが有効に働いています。

また、九州電力管内では出力抑制の頻度が高く、蓄電池による電力の貯蔵ニーズも高いことから、設備を有効活用しやすい土壌があります。このような条件下では、短期間での投資回収が可能なモデルも一部に登場しています。

ただし、これはあくまで特例的な事例であり、全国で同じような採算性を期待するのは困難です。導入地域の制度、需給バランス、電力価格の動向などを慎重に見極めたうえで、事業計画を立てる必要があります。

アグリゲーターとの連携による運用最適化

系統用蓄電池の事業化を考えるうえで、欠かせない存在が「アグリゲーター」です。蓄電池を最大限に活用するには、複雑な市場取引や需給調整への対応が求められ、これを担うのがアグリゲーターの役割です。本章では、国内外での実例を交えながら、アグリゲーターとの連携がなぜ重要なのか、そしてどのようにビジネスの成否を左右するのかを具体的に見ていきます。

東急不動産×パワーエックスの蓄電池システム

2023年、東急不動産が運用を開始した系統用蓄電池プロジェクトでは、パワーエックス製の蓄電池を採用し、定格出力1.8MW・定格容量4.9MWhというスペックを備えた設備が導入されました。このプロジェクトの注目点は、蓄電池そのものよりも、その運用を担うアグリゲーターの存在です。

実際の運用を委託されたのは、自然電力グループの「Shizen Connect」です。東急不動産は事業主として設備を整え、Shizen Connectが市場取引や需給調整、放電制御といった実務を担う体制が構築されています。このような役割分担によって、事業全体の効率と精度が高まり、運用リスクの低減につながっています。

アグリゲーターの役割と必要性

アグリゲーターとは、蓄電池や再エネ発電設備を束ね、電力市場や需給調整市場に対して一括して取引を行う存在です。個々の設備が単独で対応するには複雑すぎる市場ルールや取引判断を、代行・最適化するのが主な役割です。

たとえば、電力価格の変動をリアルタイムで把握し、最適なタイミングで充放電を行うには、高度な予測技術と迅速な対応が求められます。これを電力事業に不慣れな一般企業や自治体が行うのは難しく、アグリゲーターの専門的な知見とシステムが不可欠です。

また、需給調整市場や容量市場など、取引の種類によって必要な対応も異なるため、蓄電池の性能を最大限に引き出すには、専門家との連携が前提になります。

自然電力、GridBeyond、日本工営の取り組み

日本国内では、大規模蓄電池の運用を担えるアグリゲーターはまだ限られています。そのなかでも注目されるのが、自然電力(Shizen Connect)、GridBeyond(グリッドビヨンド)、日本工営の3社です。

自然電力は、自社グループ内でアグリゲーションサービスを展開し、AIやIoT技術を活用した高度な運用ノウハウを蓄積しています。イギリス発のGridBeyondは、デマンドレスポンス(DR)を得意とし、既にアイルランドや欧州での実績を活かして日本市場に進出。さらに、日本工営は安藤ハザマとの共同出資による新会社を設立し、国内の蓄電池事業への本格参入を表明しました。

これらの企業は単なる取引代行にとどまらず、設備設計やファイナンス、リスクマネジメントまで含めた包括的なサービスを提供しており、国内での蓄電池普及を支える重要なプレイヤーです。

AIを活用した市場取引の最適化(E-Flowの事例)

関西電力グループのE-Flowは、AIを活用した蓄電池運用の最適化に取り組んでいます。卸電力市場や需給調整市場における価格の変動をAIが学習し、最適な充放電のタイミングを自動で判断するシステムを構築しています。

このようなAIベースの制御により、人的ミスの削減と即時対応が可能になり、運用効率の大幅な向上が期待されます。さらに、蓄電池の劣化を最小限に抑えつつ、収益性を最大化する戦略が実現できます。

AIの導入は初期費用がかかりますが、長期的にはコスト削減と収益安定に大きく貢献するため、今後の標準技術になる可能性があります。

運用コストとリスクを見据えた事業戦略

蓄電池事業の成功には、単に安価な設備を導入するだけでなく、その後の運用コストやリスクをどう管理するかが重要です。特に、アグリゲーターの活用には継続的な委託費用がかかるため、事業開始前にしっかりと収支計画を立てる必要があります。

また、市場環境の変化により、期待していた収益が得られない場合もあります。価格が急落した場合に備え、複数の市場で取引できる柔軟性や、AIによる自動制御といった技術の導入が、リスク分散の観点からも有効です。

蓄電池の性能、立地、契約先、運用パートナーといった多くの要素が絡むため、自社がどのポジションで事業を展開するのか、事前の戦略立案が不可欠です。

政府の支援策と今後の展望

系統用蓄電池の普及を本格化させるためには、民間企業の取り組みだけでは限界があります。政府の支援制度や技術開発の促進、人材育成など、多方面からの後押しが必要です。本章では、現在の補助金や制度の状況を整理し、技術的・政策的な展望、そして日本独自のビジネスモデル構築の可能性について掘り下げます。

導入補助金と制度支援の現状

現在、日本政府は系統用蓄電池の導入促進のため、複数の補助金制度を用意しています。代表的なものに「定置用蓄電池導入促進事業」や「再エネ導入加速化基金」などがあり、設備費や工事費の一部が支援対象となります。

補助率は事業の内容や規模によって異なりますが、最大で1/2程度が支援されるケースもあります。ただし、補助金の申請には事前の計画策定や、事業終了後の効果検証などが必要となり、手続きには一定の専門知識が求められます。

さらに、2025年度のエネルギー基本計画では、蓄電池を「エネルギー供給の重要インフラ」と位置づけ、今後も安定的な財政支援を継続する方針が示されています。こうした制度の活用が、今後の導入加速において大きなカギを握ります。

普及拡大に向けた技術開発と人材の課題

系統用蓄電池の普及において、技術開発と人材育成の遅れは深刻な課題です。国内メーカーの多くは家庭用や小規模事業用の製品に強みを持つ一方で、系統用の大容量・高出力タイプに関しては、海外勢との技術差が目立っています。

たとえば、蓄電池の長寿命化や充放電の最適化制御、発火リスクの低減など、より高度な性能を求められるため、研究開発投資が不可欠です。また、それらを実装・運用できるエンジニアや市場アナリストなどの人材も不足しています。

現在、国や自治体は大学や研究機関との連携で人材育成プログラムを推進していますが、現場レベルで即戦力となる人材が育つまでには時間を要します。普及拡大には、技術と人材の両輪を同時に強化していく必要があります。

系統安定化に向けた政策的意義

系統用蓄電池の導入は、単なる設備投資ではなく、国家レベルのエネルギー政策における中核的な施策です。再生可能エネルギーの拡大にともなう出力変動や需給ギャップを吸収する存在として、電力系統の安定に大きく貢献します。

特に、太陽光や風力といった自然変動型電源が主体になる将来において、電力の「貯蔵」ができる蓄電池は、調整力・予備力の観点でも欠かせません。蓄電池が増えれば、火力発電への依存を減らしつつ、CO₂排出量の削減にもつながります。

政策的にも、こうしたインフラを整備することは、エネルギー安全保障の強化や、災害時のレジリエンス(復旧力)向上といった面でも大きな意味を持っています。つまり、蓄電池の普及は「再エネ導入の結果」ではなく、「前提条件」として扱われつつあるのです。

日本独自の事業モデル構築に向けて

日本では、海外のように自由化された電力市場や巨大資本による集中投資が難しいという背景があります。そのため、政府は「日本型の蓄電池事業モデル」の確立を目指しています。

たとえば、地域の再エネ事業者と地元自治体が連携して蓄電池を共有利用するモデルや、中小企業がエネルギーコスト削減を目的として小規模ながらも市場取引に参加するモデルなど、独自性のある取り組みが始まっています。

また、アグリゲーターと連携したマルチユース(複数市場対応)型のビジネスモデルが、投資リスクを抑える策として注目されています。こうした柔軟で現実的なアプローチにより、海外とは異なる形での持続可能な蓄電池ビジネスの確立が期待されています。

まとめ

系統用蓄電池は、再生可能エネルギーの拡大と電力系統の安定化において、これからのエネルギー社会を支える重要な柱となります。しかし、導入コストの高さや市場の複雑さ、運用における専門性の高さなど、多くの課題が残されているのも事実です。

本記事では、2025年3月に発表された「定置用蓄電システム普及拡大検討会」の報告を基に、国内外の導入動向や投資コスト、収益化の手段、そしてアグリゲーターとの連携や政府の支援策まで幅広く解説してきました。

今後の系統用蓄電池ビジネスの未来を切り拓くには、以下のような視点が重要です。

  • 複数の収益源を組み合わせた持続可能なビジネスモデルの構築
  • アグリゲーターやAIを活用した高度な運用体制の確立
  • 政策と連携した資金調達支援や制度整備
  • 地域特性やニーズに応じた柔軟な事業戦略の立案

単に設備を導入するだけではなく、その運用設計や事業スキームまでを一体で考えることが求められています。系統用蓄電池ビジネスはまだ発展途上にありますが、確実にその必要性は増しており、適切な戦略を取れば大きな可能性が広がっていくでしょう。

持続可能な電力インフラの実現に向けて、今こそ本格的な取り組みが求められています。

 

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